ドルオタになりきれない声のオタクの話

最愛の声優ユニットが解散してから一年近くが経ちましたね。皆様お元気でしょうか。オタク続けていますか?

僕はというと、数多の先人たちがそうであったように、気が付いたら…. アイドルの現場に通うようになっていました。今日はそんな話をしたいと思います。



  • きっかけ

知り合いのオタクに誘われました。僕は1アニメくんとして「ドルオタにはならんぞ!」という謎の抵抗がありましたが、食わず嫌いも良くないと思い行ってみました。

ドル・オタク大先輩の皆様は「顔がいい!体がいい!曲がいい!」などの高尚な理由でその現場に行かれた方が多いかと思われますが、僕が連れて行かれたその現場は某中身の詰まったクリエイター集団くらい有名なアニソンを聴くものなら知らぬ人はいないだろうクリエイター集団のお抱えアイドルでした。曲の良し悪し、好き嫌いは置いておいて、曲中に好きな作曲家の名前を叫んでゲラゲラ笑うことを生きがいにする低俗な僕にはぴったりの現場でした。



  • アイドルグループの紹介

少しだけ僕の推しアイドルグループの話をさせてください。

例のアニソン作家集団が曲を提供しているアイドルは同じ事務所に3グループいました。ここではそれぞれ仮にA, B, Cと呼びます。Cは最近出来たばかりなので一旦置いておきましょう。AとBは事務所設立当初からかれこれ5,6年活動してるグループでした。Aは事務所の看板グループで、武道館で単独をやった実績もあり、人気の高いグループでした。一方Bはメンバーの移り変わりが激しく、過去に一度グループ名も変えていて、7人組のグループなのに初期メンが2人しかいない、そんなグループでした。 僕はどういうわけかBの初期メンのうちの片方の歌ウマに心引かれ、何の因果か苦難多い"事務所の真ん中っ子の7人組"を応援するようになっていました。



  • カルチャーショック

イベノが機能していなかったり、音源がほとんど流通していなかったり、驚くことはたくさんありましたが、一番戸惑ったのはチェキの存在でした。ドルオタ一年生の僕は当初は「や、俺、別にチェキ撮りに行くためにライブ行ってるわけじゃないし曲聴きに行ってるから」と一生斜に構えていましたが、例の歌ウマの推しちゃんで狂いました。推しちゃんは作編曲家の話にこちらが引くくらい食いついてくるヤバい子だったので、話が尽きませんでした。どうもその子は、ユニットの前身時代にナオタだったのが、オーデ受かってアイドルやってるらしくてワロタとなりました。最古参ナオタがよ。



  • 推しメンの卒業

そんな推しちゃんは4月にグループを卒業するらしいです。先に述べたように7人のうち2人の希少な初期メンの一人でグループ唯一の歌ウマなので、グループへの打撃は計り知れないと思います。

僕は推しちゃんの歌声が本当に好きで、今回はアイドルとオタクという出会い方だったけれど、もし路上でギターを弾き語っている彼女に出会ったとしてもきっと好きになっていたような、そんな気さえします。卒業あるいは解散はいつかは起こるものだけれども、それまでの活動や音源が円盤として記録に残らないというのは、キツイものがありますね。今はただ残された時間を楽しく過ごそうと思っています。



  • 今後は

声の現場に戻ろうかな....戻れるかな。

2019年のアニメ・声優ソング10選

こんにちは.timp.です. 2019年,嬉しいことも悲しいことも色々あり,目まぐるしい一年でしたね.皆様お元気でしょうか?

2019年も本当にたくさんの素晴らしい曲がリリースされました. 良い曲は何年経ってから聞いても良いと思うので「いつリリースされたか」で選別するのはナンセンスかなと思っていましたが,いざ10選を作ってみると楽しいですね.

ルールとして,2019年1月~12月にリリースされた曲から選びました.

この一年に想いを馳せて,皆様が穏やかに新年を迎えられるよう,願っております.

timp.的2019年の10選

1 Blooming, Blooming!

(作詞・作曲・編曲:園田健太郎)

私咲くよ! 何よりも大切な場所ができたから

ベースラインが気持ち良い曲です.1Bのスイングがど性癖です.サックスソロも堪りません. サビ裏拍でハイハットがオープンするやつ!!!もう顔面グチャグチャです. リステのキャラソンはどれもレベルが高く,どれか一曲を選ぶのに難航しましたが,この曲はとりわけ芸術点が高いと思い選びました.

2 キラリスト・ジュエリスト

(作詞:只野菜摘 作曲・編曲:広川恵一(MONACA))

奇跡がうまれる その瞬間に間にあいたいの

初めてこの曲をフルで聞いた時,間奏で転げて「UNISON SQUARE Girls!」などとオタクとふざけ合っていたのを昨日のように覚えています.しかし,曲を聴きこむにつれ,節々から "音" が聞こえてくる気がして,広川恵一さんと只野菜摘さんがRun Girls, Run!に込めた願いを感ぜずにはいられなくなりました.ごめんなさい.

3 CAFUNÉ

(作詞:鹿乃 作曲:田中秀和(MONACA) 編曲:Aire)

ここにいる

最愛の作曲家さんと,今最も神戸牛を贈呈したい編曲家さんの,愛の結晶です.

4 きみは帰る場所

(作詞:林英樹 作曲・編曲:佐藤純一(fhána))

想像超える憂鬱も 星座になれない星も

佐藤純一さんは,憂鬱な曲を明るく昇華させるのが非常に得意なコンポーザーさんですね.2020年もたくさんの女性声優さんと信頼関係を築いていただきたいです.

5 サマー・スライダー

(作詞:只野菜摘 作曲・編曲:田中秀和(MONACA))

変わっていくものと 変わらないものを

2019年個人的田中秀和さんベストソングです.アップテンポで底抜けに明るいブラス,何やら複雑なABメロ,開放感あふれるサビの進行.Dメロ.これぞMONACA

2010年代のアニメソングサウンドを支え続けた天才の描く2019年の曲は,どこか懐かしくて,少しだけ悲しみに溢れていた.そんな気がします.

6 ステレオライフ

(作詞:Soflan Daichi 作曲・編曲:伊藤翼)

約束された明日がないってことは 何でも出来る

KiRaReで一番いい曲です(諸説あり).スローテンポの曲でマンネリ化を防ぐために変拍子にしたり急に転調したりすることはありますが,この曲は技巧的だと思います.初めて聞いた時,ABメロは小節の頭が休符から始まっているのにサビはアウフタクトで入ってくるので「キメの伊藤翼さんはバラードもキメキメだ!」となりました.

7 ミナミカゼ それはきっと

(作詞・作曲:かの香織 編曲:鈴木智文)

さよなら おかえり 生まれ変わっても多分わかる

安野希世乃さん最新アルバム「おかえり。」のリードナンバーです.聴き心地の良いスムースフュージョンに安野さんのやさしい歌声が乗って,風になって何処かに飛んで行ってしまいそうです.

8 言葉の結晶

(作詞:只野菜摘 作曲・編曲:広川恵一(MONACA))

あなたに 誰かに 聴いてほしいことがある

この曲,そしてこの次の曲は,僕のブログを読んでくださる優しい方なら知らない人はいないかもしれません.実際この二曲は僕にとってとても大切な曲で,10選で選ぶべきかとても迷いました. それでもここに載せたのは,この曲が想い出だけの曲になって欲しくなくて,ひょっとしたらまだ聴いたことがない,あなたに,誰かに,聴いてもらえるかもしれないと思ったからです. もし僕が声優ユニットWake Up, Girls!をまだ知らない人に何か一曲だけ薦めてほしいと言われたら,この曲を薦めると思います.聴いてみて,どうかその異様さに気づいて欲しいです.

9 海そしてシャッター通り

(作詞:只野菜摘 作曲・編曲:高橋邦幸(MONACA))

錆びない想い出を 抱きしめるように

あまりにも美しい曲です.色々な記憶が蘇ってしまうので多くを書けません.SSA以外の映像が残っていないのが惜しいです. この曲の間奏のフルートソロは同作曲者,高橋邦幸さんの劇伴「小さな一歩」がモチーフとなっています.ぜひこちらも聴いてみてください.

10 奇跡

(作詞・作曲・編曲:川崎里実)

この先にある景色が どんなものかわからないけど

東山奈央さんの声は非常にバラードに合いますね.eyelis川崎里実さんから久々の曲提供に気持ちになりました.いい曲です.



(o・∇・o) 終わりだよ〜 もちょ

【考察】『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』はKiRaReの成長物語なのか

こんにちは.timp.です.

久しぶりに良いなと思うアニメを見た気がします.初めは女児向けアニメくらいの気持ちで見ていたのですが,最近「リステDDってどんな話だったっけ」と思い返すうちに,意外と内容が深かったのではないかと思い,思わずノベルゲーム版を読みました.3rdライブ参加を目前に,思ったことをまとめておこうかなと思います.

*アニメ版とノベル版のネタバレを含みます.





あらすじ

5月,中学1年生の式宮舞菜は稀星学園高尾校に転校してきた.舞菜は姉の式宮碧音に憧れ,「いつか一緒にアイドルになる」ことを夢見て本校に入学したが,他人と戦うことを恐れ,逃げ出してしまったのだった.舞菜は「もう人前で歌ったり踊ったりしない」と決めていたが,謡舞踊部に迷い込み,月坂紗由に出会うことで,もう一度歌い踊ることを決意する.その後謡舞踊部は部員を集め,アイドルの大会であるプリズムステージの東京予選決勝にKiRaReとして登り詰めるが,碧音の率いるステラマリスと戦い,敗れてしまう.


考察

リステの物語のメインテーマは「もう一度ステージに立つ」ことであるのは疑いようがないでしょう.しかしこの物語のもう1つのテーマに「家族」があり,式宮姉妹,月坂紗由,オルタンシアの物語に共通してモチーフとして取り入れらています.


式宮姉妹と月坂紗由のストーリーにおいて「家族」は,一般的な温かいモチーフとしてではなく,むしろ戦い倒さねばならない相手として描かれていました.式宮舞菜のアイドル観の変遷,舞菜が碧音に立ち向かうこととなった経緯をもう一度確認します.

舞菜は初め,プリズムステージに消極的でした.舞菜にとってアイドルの目的は「大切な人と歌ったり踊ったりすること」で,大会で戦うことは本質ではなかったからです.


舞菜「私はただ,月坂さんと歌ったり踊ったりしたくて入部したっていうか」
( #2「完全にミジンコ」)



ノベル版の式宮舞菜はアニメ以上に,戦うことから逃げてきたこと,アイドルが戦いであることに疑問を感じていたことが述べられていますね.


舞菜「やっぱり私たちはずっと,誰かと戦わなきゃいけないのかな」



7話で東京地区大会予選で舞菜が逃げ出してしまうのも,姉の碧音と出会い,自分達がライバルであることを再認識してしまうからでした.


碧音「確かに私たちはライバルね.でも私嬉しい.どんな形でも,まーちゃんと同じステージに立てるのが」
( #7 「先輩とはいえ少し黙らせるべきか」)



そんな舞菜のアイドル観を変えたのは他でもない月坂紗由でした.大会を逃げ出した舞菜を呼び戻すために紗由がかけたノベル版の以下の言葉,「アイドルを目指すってことは,きっと戦いなんだね」は,あまりにも強烈でした(アニメ版ではカットされてました).リステの物語がKiRaReを主軸に置く以上,7話のこのシーンは限りなく "美しく" 描かれていましたが,紗由のこの言葉は舞菜にとって酷な宣言だったと思います.それでもこれこそが月坂紗由のアイドル観であり,彼女の背負ったバックグラウンドの現れであり,物語上大事なセリフでした.


紗由「舞菜,アイドルを目指すってことは,きっと戦いなんだね」



式宮舞菜は紗由のこの言葉に感化され,さらにもう一度ステージに登ること,姉に立ち向かうことを決意します.そしてKiRaReは大会に優勝すること,さらに言えばステラマリスに勝利することにどんどん傾倒していくことになります.




これと対照的な位置にいるのが,オルタンシアです.彼女達は姉妹同然の親戚2人組で「同じステージに立つこと,楽しむこと,勝負にこだわらないこと」に終始主眼を置いていました.


陽花「プリズムステージに出場するのも,たくさんの人の前で紫ちゃんと踊れるから.みんなの前で思いっきり楽しみたいなって」
紫「勝ち負けも大事だけど,私も陽花とずっとずっと楽しみたい,それが私たちの夢だね」
(#6 「紫ちゃんは私のおばさん」)



オルタンシアは,この物語全体のアンチテーゼとして,Re:ステージがおそらく最も伝えたかった(と僕が思う)アイドル観,「同じステージに立つこと,楽しむこと,勝負にこだわらないこと」を示しています.敵ユニットに物語で一番伝えたかったメッセージを言わせたのは,熱いですね.

すなわちオルタンシアは,同じ道を目指しながらどこかですれ違ってしまった式宮姉妹が至れなかった境地であり,理想であり,ひょっとしたらありえたかもしれない世界を地で描いているのです (もしそうでなければ,オルタンシアがトロワアンジュやテトラルキアと比べて物語上ここまで優遇されることもない気がするのです).


ED「憧れFuture Sign
舞菜の手を引く碧音の写真と,直後フィルムに分断され色褪せる二人





これらをまとめてリステの物語を一言で表すならば,もう一度ステージに立つことを決めた少女が,それと引き換えに家族と決別していく話,なのではないかと僕は考えています.

式宮舞菜は,KiRaReを手にし,もう一度ステージに立ったことと引き換えに,式宮碧音と一緒にアイドルになるという夢を失ってしまったのではないでしょうか?


舞菜「お姉ちゃんと踊ってる時も,みんなと踊ってる時も,同じようにワクワクして,楽しくて.けどただ1つだけ,お姉ちゃんと踊ってた時には思わなかったことがあるんです.もっともっと,ここより先の景色を見てみたいって.」
( #8 「ノーギャラなんかでやってられない」)


舞菜「あのね,お姉ちゃん,私これからもずっと高尾校にいるよ.私小さい頃からお姉ちゃんに憧れて,ずっとその後ろを追いかけて,一緒にアイドルになるって夢見て,本校にも入学できた.でも,辛くなって結局逃げちゃって.もう夢なんて忘れてたはずなのに,高尾校でみんなに出会って,もう一度夢を追いかけたいって思った.また逃げ出しちゃった時もあったけど,みんながいてくれたから今度は頑張ることができた.ちゃんとステージに立つことができたの.だから,私はお姉ちゃんのところには戻らない.KiRaReのみんなと,これから先の景色が見たいの.」
( #10 「戦闘力がどんどん上昇している」)




僕にはこの決断が式宮舞菜にとって本当に幸せなものだったのか,いまだにわかっていません.

プリズムステージは,KiRaReが優勝してもステラマリスが優勝しても,式宮姉妹は救われなかったのではないかと思います.二人が救われる唯一の方法は,式宮舞菜が最初に本校を辞めず,ステラマリスに加入していることだったのかもしれないと思うと,この物語は悲しい物語のような気がしてならないのです.

この点でRe:ステージの物語は,単にKiRaReあるいは式宮舞菜の成長物語ではなく,むしろ ”Re:ステージ” することで式宮舞菜が失っていったものに焦点が当たった,影のあるアイドル群像劇である点に魅力があると思います.

ポップでキュートな絵柄,キラキラな楽曲,どこまでも前向きな歌詞からは想像もできなかったストーリーの作り込みに感服です.恐れ入りました.